December 2002Archive

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キネガワ堂のプリントサンプルで稼いだビール券を持って酒を買いに行ってきました。いつもは横目で見ながらも無視していた棚を漁ります。もうこの時点で幸せ。

まずは日本酒。
普段日本酒はあまり飲みません。一番大きな理由はコストパフォーマンスが悪いから。それと安い酒にハズレが多くて外れると悲惨だから。あとは気持ちよくなりすぎて何もする気がなくなるから。でも日本酒ももちろん大好き。正月に呑まないでいつ呑むのよ!

よく知ってる銘柄をいつも呑むのもいいんだけど、滅多に買わないから違うのも呑みたい。「浦霞」「一之蔵」「菊水」.........悩む?。そんで呑んだことはあるけど買ったことはない酒ということで「住吉 本醸造」を選んだ。1800円也。

次にラムを買った。これも呑んだことのないヤツを試そうってことで「バカルディ8年」。もちろんダークラム。1980円也。さっきちょっと味見をしたらおいしいー。これは女の子にもうけそうな味です。カクテルなんかにはしません。ストレートが基本。

そしてワイン。ワインのことはよくわからん。
激安ワインばっかり飲んでる。せっかくだから千円以上のワインを能書きを読みながら選ぶ。「バルベーラ・ダスディ」イタリアワインの赤。1380円也。まだ開けてない。

ついでにコロナビールを二本。キリンの黒ビールを二本。普段用にジムビーム(バーボン)を一本。
しめて税込み7296円也。
レジでビール券をどさっと。
キネガワ堂をやってて良かったよーーーー!
買ってくれた人ありがとうーーーー!
オラ、しあわせもんだー。

今年最後のNEWS。
みんなの来年がよい年でありますように!

サクバ
__________________

こういう場ではお初のチムリクです。
このサイトの裏方やってます。
今年はありがとー!
来年もよろしくー!

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滝が好きだ。 実際の滝はどでかい音を立てて落ちる。 しかし何故か頭の中で想像する滝は音もなく落ちている。 日本画や写真やテレビなどのメディアの影響なのかもしれない。でも理由はどうあれ俺の頭の中では、滝は音もなく落ちる。

滝の落ちる空間は魅力的だ。
いろんな空間があるけど、たぶんどんな滝でも好きだろうと思う。滝は橋にも似ている。垂直に架かる橋だ。滝は線路にも似ている。高いところと低いところを繋げる鉄道だ。滝はゲロにも似ている。こらえきれない噴出だ。滝は穴を作る。滝は流れを結ぶ。滝は岩を削る。でも滝になっている水は滝になろうなんて思っちゃいない。たまたま滝になってしまっただけ。人間の賛美なんて知ったこっちゃないのだ。

かっこいいいなぁ。

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「んもぁー」

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「空飛ぶ毛虫」

リンクをいくつか追加。
それと大して気合いの入っていないバナーもアップ。

[TRASHLOG]
前にこのコーナーでも紹介したゴミ拾いサイト。
大好き。

[oneeyeblack.v.III.pitchblack]
ル:通信で紹介したダークアートのサイト。

[Painting PP.]
絵描きの佐藤さんのサイト。

[the beautiful decay.com]
ミクストメディアの作品を作っている人のサイト。

しかしリンクページってなんか自分の中でスッキリしないのはなんでだろ。リンクをするってことに関してはかなりはっきりした納得がある。だからこういう場所でリンクをつけることに関してはなんのためらいもないし、美しいと思える。でもリンクコーナーを設けるといきなり困っちゃうんだよね。どうせリンクコーナーを作るんなら、ブックマークを全部のせるとか、じゃなかったらすごく絞った意図の元にやった方がスッキリしていると思うのだけど、そうなっちゃうと逆にめんどくさかったりもして上手く行かなくなる。

ルのリンクコーナーは「こんな面白い人がいるぞ!」というのが基本のつもりなんだけれども(あと無断リンクも基本。断りのあるサイトを無断リンクしたりはしないけど、リンクというのは無断リンクが基本だと思っている)、それにしたってあぶれている人も山ほどいるわけで(知ってるサイトだけでも)、いったい何を基準にして自分はそれらのサイトを選んでいるのかどうにもはっきりできないのだ。

リンクページはデザイン的にも今一番気に入らないページの一つでなんとかしなければと思い続けているのだけど、いつまでたっても変わらない理由はそのへんにもあったりするのです。いくら考えたところでスッキリした答えは出無さそうですが、せめて「俺はこうなんだ」という方向性だけでもはっきりさせないと気分が悪いなぁ。

あるところに札束を数えている女を見ながらマスターベーションすることでしか射精できない男と、札束を数えるのが欲情するほど大好きだったためにその男と出会って恋に落ち、セックスできないのは悲しいけれど、それでもその男のことをとても愛している女がいました。
二人はとても優秀な社会人でした。何故なら二人には大量の札束が必要だったからです。しかし二人はとても貧乏でした。何故なら二人には大量の札束が手元に無ければならなかったからです。

二人が出会った頃、二人の手元には30枚ほどの札しかありませんでした。毎日の生活の中でその札が減っていくのはとても悲しいことでした。男は同じ札が二度数えられることをとても嫌がりましたし、その気持ちは女にも理解できました。実際それで問題がなかったらどんなに楽だったことでしょう。しかし男のペニスは2度目の数えに入ったとたんに萎えてしまったし、女の気持ちも萎えてしまうのです。また、札は全て同じ札でなくてはなりませんでした。5000円札と1 万円札が混じっていてはダメだったのです。普通は1万円札を用いましたが、ちょっと気分を変えたいときなどは5000円札を使うこともありました。

女は札を数えるのがほんとに上手でしたので、30枚の札などはほんの2秒ほどで数え終わってしまいます。ですから10枚をまとめて数えるのは二人の間で禁止になりました。かならず一枚一枚ピチッピチッとやります。それでもほんの10秒ほどもかかりません。男は出来るだけなめらかに素早く数えられていくのが好みでしたが、美しさを重視することで時間を20秒まで延ばすことが出来ました。その手つきといったら神業のようなキレの良さと天使のような優雅さなのですから男が惚れ込んだのも無理はありませんでした。「オマエは俺のヴィーナスだ、いつかオマエがフルスピードで数えても一日中かかるぐらいの札束を用意してやる」というのが男の口癖で、女はそれを言われると一日中自分の前でマスターベーションしている男を想像し胸が熱くなるのでした。

二人はほんとによく働きました。地位も上がり年収もそれなりになりました。今ではフルスピードで数えても30分ほどかかる札束が二人の前にはあります。
「俺達もやっと人並みになったな」と男は言いました。
「そうね」と言って女は笑いました。
「なんかおかしいか?」
「ううん」
「俺、最近思うんだけどオマエ札を数えるのが前ほど好きじゃなくなってきたんじゃないか?」
「そんなことないわよ」
女はそういってから、ああ、嘘をついたな、と自分で思いました。別に男のことを嫌いになったわけでもないし、飽きたわけでもないのに、前ほど気持ちが入らなくなってきたのは事実だったのです。
「オマエを攻めるつもりなんてないんだ。いいんだよ。だけど俺考えたんだ。おれたちには今デカイ冒険が必要だと思うんだ。今度オマエが数えたことがないぐらいの札束をここに積んでやる。ほんとに一日中かかるぐらいの札束だ」
女は急に怖くなりました。
「なにいってんの、そんなの無理よ。一体どうやってそんなお札を用意できるっていうの?」
「いいからまかせておけって、今度の土曜日。この部屋は札で埋まる。そこで俺達はぶっ通しで愛し合うんだ」

それから土曜日までの間、男は一言も口をききませんでした。そして土曜日の朝、男はいつものようにスーツを着て出かけました。出掛けに女に「キスをしてくれ」といいました。女は男の頬にキスをしながらあまりの不安に涙が出そうでした。

男はいつまでたっても帰ってきませんでした。女は何度も男を探しに行こうと思いましたが、今帰ってくるかもしれない、あと5分したら帰ってくるかもしれないなどと思うと、外に出ることもできませんでした。そうこうしている内に夜中の12時も過ぎ日曜日になってしまいました。
二時を回った頃チャイムを鳴らすものがいました。
ドアの覗き穴を覗くとスーツを着た見慣れない男が立っていて「警察です開けてください」といいました。
ドアチェーンをかけたままドアを開けると男は警察手帳を取り出し「警察のものです。実は大変申し上げにくいのですがお宅の旦那さんが造幣局に立てこもっております」といいました。女は「ああ、やっぱり」と思うと同時に安心もしました。刑事は女に説得にあたって欲しいので付いて来て欲しいといいました。

現場に案内されると男は札に囲まれてピストルを構えていました。刑事の話によれば男の要求は自分の妻をここに連れてこいということだけだというのです。
女は全てを理解しました。
「まかせてください」と女はいいました。
「でもとにかく手を出さないで静かにしていてください。絶対危険なことにはなりませんから。約束してください。お願いします」
刑事は女に約束をし周りを取り囲んでいる警官に指示を出しました。現場に静寂が訪れました。
女は男の前に行くと札を数え始めました。女の指と札の擦れる音ががらんとした空間に響きました。男はピストルを構えたまま女を見つめました。女はこれまでにないぐらいのスピードと美しさで札を数えました。警官達は唖然とした表情で二人を見つめました。この二人が一体何をやっているのかまったく理解できなかったからです。

一時間がたちました。我慢できなくなった刑事が女の名前を呼びました。すると女は「黙りなさい!」と強く大きな声でいいました。男はそれまで、いくら女が美しく札を数えても勃起することが出来ないでいました。警官に囲まれて、生まれて始めてピストルを構えて緊張もしていましたし、数え切れないぐらいの札を数えさせることが出来たことに対して少し舞い上がりながらも有頂天になってもいたのです。しかしその女の声が男の心に変化をもたらしました。男は自分と女の結びつきを感じ、二人の間に自分たちの部屋にいるような親密な空気を感じたのです。すると男のペニスが急に充血し始めました。女はひたすら札を数えていましたがそれがすぐにわかりました。見たわけではありません。感じたのです。女は今まで以上のスピードで札を数え始めました。男はピストルを構えたまま絶頂に向かって登りつめていき、それと共に女の札を数えるスピードも上がっていきました、女は男の体を自分の体の中に感じましたし、男は自分が女を愛撫し、同時に抱かれているように感じました。そしてこれまでに感じたことのない強烈なエクスタシーが二人に訪れました。男の目から涙が溢れました。そして女の目からも涙が溢れました。男はゆっくりとピストルを床に置き、女は札を数えるのを止め、二人はそのまま札束の上に倒れ込んだのでした。

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なんとなく絵を描いていたら、自分の顔を描いて見たくなったので描いてみた。真ん中のヤツ。たぶん20年ぶりぐらいだ。普段あまり鏡も見ないので、あらためてこんな顔していたのかと思った。でもあんまりベタな感じがしたんで、チムリクにメーキャップをして貰った。それが下のヤツ。

若い時ってメチャクチャ童顔だったので皺のある顔に憧れていた。中学生の時は小学生で通ったし、高校生の頃は女に間違われたこともある。ヒゲもほとんど生えなくて、何もかも異常なぐらいの奥手で、けっこうコンプレックスを持ったりもしたもんだ。それがどうです。立派なお顔になったこと。ええ、ヒゲだって多少は生えるようにもなりましたし。眉間の皺はしかめっ面をして絵とにらめっこをするからです。

カラッポだね
カラッポなオレからはなんもでてこない
カラッポだからね
ひっぱたいても蹴っ飛ばしても
ウンともスンともいわないの
締め上げても箱に入れてもなにもおきないよ
どうしちゃったのさ
あんなにおしゃべりだったのに
そんなものか
そんなものだよ
でもひょっとして
カラッポのふりをしているだけかもね
そうかもな
そうかもね
ほんとにカラッポだったりしてね
そうかもね
どうかね

もっとカラッポになったなら
なんかいいことありますか
あるかもね
ないかもね
だけどきっと音がよく響くかもね
カラッポだしね
わかりませんけどね

財布の中に300円しかなかったので電車に乗ることにした。
理由なんてよく分からない。それが300円の正しい使い道のように思えた、それだけだ。バスに乗るカネはなかったので駅まで歩いていった。今日はクリスマスイブだ。俺には関係ない。クリスマスツリーの電気がチカチカしているのを見るのは好きだったけど、そんなのは大昔の話しだ。俺は電車に乗るのだ。今はもう日が暮れた。浮かれたカップルがダサイおめかしをして歩いている。哀れなトガリネズミ。駅には300円の切符は売っていなかったので290円の切符を買った。駅ビルからバニラエッセンスの匂いがしている。吐き気がするぜ。俺のポケットには10玉が入っていてその10円がガキの頃に拾った泥だらけの10円玉のような気がした。暖かい。俺はそんな10円玉が好きだ。

電車の中はいつもよりも香水臭かった。クリスマスにはいらない匂いが世界中で溢れるものなんだ。匂いにイカレた笑いが混じり合っている。幻聴か?違う。実際に混じっているんだ。お前らには聞こえないかもしれないけど、ほんとに混じっているんだよ。1000年ぐらいすれば俺の正しさが証明される。俺が生きている内には無理だろうが、それぐらいは我慢してやってもいい。

四谷で降りた。そこまでしか行けなかったからだ。俺は別に四谷に来たかったわけじゃないし、特別な思い入れもない。つまらない街だ。10円玉が少し冷えていた。だけどここは俺の家じゃない。それが重要だ。俺は俺が安心していられるところに居ちゃいけなかったんだ。俺が安心できるところは俺の場所じゃない。ポケットの中の10円玉をいじりながら俺は歩いた。寒かった。もう少しまともな上着を着てくりゃ良かった、と思ったが、どうでもよかった。冬なんだし、寒くて当たり前だ。それにこの払い下げのコートはこんな日には相応しいような気がした。気が付くと新宿だった。騒々しい街だ。黄色いロータスのエリーゼが鍵が付いたままで路上駐車されていた。俺のために。優しい人がいるもんだ。アリガトウ。ご恩は無駄にはしません。タイトな運転席が気持ちを高ぶらせてくれた。車を運転するなんて随分久しぶりだ。エンジンは物凄くレスポンスが良く、ステアリングもダイレクトで素晴らしい。俺は速攻でトンズラを決めた。すると西口のガード下をくぐるときに悲鳴が聞こえた。そして信号で止まった俺の車に下着姿の汚い猫が飛び乗った。
「早く出して!」と猫は言った。
「赤だぜ」
「いいから早く!」
わかったよ猫ちゃん。

猫が下着を着るにはどんないきさつがあるのか俺には想像がつかない。でもコイツは猫で、汚れてはいるけれど洗えばそこそこイイ毛並みをしているだろう。毛並みのいい猫は下着なんかつけるべきじゃないと思ったが、猫にはそれなりにいろいろな事情というものがあることぐらい俺だって知っている。

「俺はどこにいきゃぁいいんだ?」
「ここじゃないところ」
「ここじゃないところっていってもな」
俺はとりあえず走ることにした。俺には走るための理由があったし。どこを走るかも決まっていた。知っている道を走らないということだ。猫は助手席で丸くなった。こんな狭い空間でよく丸くなれるもんだ。丸くなりながら猫は震えていた。俺はヒーターをつけて最強にした。
「大丈夫か?」
「.........大丈夫じゃない、死んじゃうよ。
あんた金持ちなんでしょ?服買ってよ」
おいおい、猫のくせに服まで着るのかよ。
「俺が金持ち?まさか。10円しか持ってねぇよ」
「嘘、10円しか持ってない人がなんでこんな車に乗ってるのよ」
イライラした声で猫は言った。
「怒るなよ。俺は金なんて持ってない。これはさっきサンタに貰ったんだ」
「馬鹿馬鹿しい!」
「嘘じゃないって、俺には見えたんだ。サンタがね。サンタがどんな形をしているか知ってる?赤い服も着てないし、デブじゃないし、ヒゲも生えていない。それはまるで俺みたいなんだ。汚いカッコで、ひもじそうで、今にも消えちゃいそうなんだ。そんでそいつが言ったんだ。この黄色い車は最新式のトナカイなんだけど、お一ついかが?って。だから有り難く貰っておくことにしたの」
「ぶあーか!何様のつもり?」
口の悪い猫だ。

俺は仕方ないので車の中を漁ることにした。そして信じがたいことにダッシュボードの中からクレジットカードを発見したのだ。出来過ぎじゃん。でも最新式のトナカイにはそれぐらいのオマケが付いているものなのかもしれない。サービス満点だ。俺はキャッシュディスペンサーを探し車を止めた。借入限度額は290,000 円だった。幸いまだ利用停止にはなっていなかった。
「金持ちになったよ」と俺は言った。
「素敵!」と猫は言った。
「で?服を買うのね?」
「毛皮が欲しい」
「自前があるじゃん。それにこの程度じゃ毛皮は買えないよ」
「偽物でもいい」
「そ、じゃ、俺もなんか買お」

俺達はどうやら埼玉県にいるらしかった。
服屋ってのはどこにあるんだ?
少し走るとショボイ商店街があった。
そしてなんとも時代遅れな服屋を発見した。
ターゲットは地元のおばちゃんと土建屋のオヤジだとしか思えないような服屋だ。
「ここにしましょ」
と猫がいった。
「ここでいいの?」
「あたし達の着る服はここにあるの」
コイツ急に喋り方が変わった。だから猫はわからない。それにあたし達ってなんだよ。俺らは同士なのか?
俺と下着姿の猫は店に入った。やる気ゼロの店だ。そして猫は赤いフェイクファーのコートを選んだ。それにカシミヤ風のどでかいピンクのバラの模様が付いている白いワンピース。あと、こっちはちゃんとしたウールのあったかそうな黄色のタイツ。そういえば猫は靴を履いていた。最近の猫は靴も履くのかい。これがまたワンストラップの私立の女子小学生が履くような黒いローヒール。しかし全てフィッティングされると、これもアリか、と思わせるようなコーディネートが出来上がっていた。呆れた俺は負けず嫌いの性格がムズムズとしてきた。襟のどでかい斜め縞のサテンのシャツ。赤いスラックスに白のエナメルのベルト。竜の刺繍がしてあるタマムシのベスト。女物の燕脂の薄ーいダウンのカーディガンにスーパーロングの眩しいぐらいの黄色のコート。しめて消費税込み19万8千と飛んで15円也、チーン。店のオヤジが幸せそうな笑顔を浮かべて「お似合いですよ」と言った。

「で、アタシ達はこれからどうするのかな?猫ちゃん」
「あたし達はこれから高速道路に乗るの。でもその前に買い出しよ」
近くに酒の激安ショップがあった。
俺達は店に入るとそれぞれ好き勝手に食い物や飲み物を買った。
猫はフクロウの絵が描いてある赤ワインとカマンベールーチーズとタンスモークとジェリービ?ンズと金平糖とタマゴボーロとミルクを買った。俺はスモークサーモンとクラッカーとレバーペーストとバランタインの20年とパンペロのラムとキッスチョコレートのビターを買った。メチャクチャだ。

俺達は東北道に乗った。グチャグチャ食べたり飲んだりしながら。猫は食ってるときだけは猫らしくピチャピチャカリカリとよく音を立てて食べた。なんだ、やれば出来るじゃないか。するといきなり猫がキスをしてきた、と思ったらそうじゃなかった。食っていたタマゴボーロを口移ししてきたのだ。俺は思わず吐き出してしまった。
「何すんだよ!オマエ!」
猫はビックリしていた。きょとんとした顔をして、それから涙を流し始めた。
「なんなんだよ、まったく!今度は泣きかよ」
猫はいつまでたっても泣きやまなかった。あ?あ。
「わかった、わかった、わかったから」
俺がそういうと、猫は泣きながらタマゴボーロを三つ口に入れると、噛み砕いてから俺の口の中に入れてきた。猫にそんな習性があるなんて聞いたこともない。だいたい猫は母乳で育つんだろ。口移しで餌をあげるのは鳥とかだろ。そう思ったけどなんか妙な気分になった。ちょっと気に入ってしまったのかもしれない。

「雪が見たい」と猫が言った。
「今日はどこ行ったって雪なんて降ってないと思うぜ」
「でも見たい。だってクリスマスだし、映画だとクリスマスには雪が降ってるし、クリスマスに雪が降った事なんてないし、一回雪が降ってみたい」
おまえなぁ、もうちょっと日本語勉強しろよ。それにオマエは猫のくせに映画も見るんかい。まあ、いいけどさ。
「積もってるところだったらあるな」
「それでもいい」
俺は高速を降りるとカーショップを探しタイヤ交換をすることにした。ここからなら奥羽山脈も近いし、雪の積もっているところなんていくらでもある。ショップの店員が俺達のカッコを見て「羨ましい」という字を顔に書いた。そういうのはすぐにわかる。晴れ着なんてものはどこでも調達できるものなのだ。タイヤ交換が終わる間、俺は自販機で煙草を買って一服した。猫はウンコ座りをして作業の様子をじっと見ていた。金を払うともう2万円しか残っていなかった。充分だろ。

「いくかね?」
「いくべよ」
エリーゼにはカーステが付いていた。しかし聞きたいCDは一つもなかった。B'z 、サザン、ザード、なんとかなんねぇのかよ、オイ。でもその中に昔の映画のサントラ集があった。これはいったいどんな用途に使われるんだ?まあいいや。いきなり「太陽がいっぱい」が始まった。そして街を出るときに検問が待っていた。酒気帯びだ。ヤバイな。
「いっちゃえ!いっちゃえ!」と猫が言った。
カーステの曲は「太陽がいっぱい」を終えて「鉄道員」のもの悲しい調べを流し始めていたが、仕方あるまい。
「いかせてもらいまーす!」
つっきった。
白バイはいなかった。サイレンが鳴った。
「来たよ???!」
「おーー!」
田舎道だ。たぶん広域農道だろう。峠に入るまで持たせられればなんとかなる。10キロぐらいサイレンの音とパピヨンのテーマがハモっていた。そして果たして峠の入口の看板が出た。
「チャーーンス!!!」
俺はステアリング右に切った。信号なんて見てなかったけど曲がりざまに軽トラに突っ込みそうになった。ゴメンよ!おじちゃん!オイラ急いでるんだ!パトカーとゴッツンコしてくれるかと思ったけど、サイレンはまだ付いてきた。だけど道は山道に入って路面凍結注意の標識がマジになってきた。サイレンの音が遠ざかっていく。雪だ。林の間に雪が残っている。
「雪だぜ!」俺が叫んだ。
「雪!ゆきゆきゆきゆきゆきゆきーーーーー!」
猫が俺の首に腕を回してキスをした。今度はキスだった。

すっかり雪景色になったところに別荘地があった。
俺は別荘地に車を乗り入れて物件を物色した。
誰もいやしない。ショボイ別荘地だ。
暖炉付きの別荘があった。俺は車のトランクの車載工具から28ミリのボックスレンチを取り出してドアの窓を割り鍵を開けた。電気も水道も止められていた。かまやしない。リビングに行くと薪と新聞紙と鉈があった。それに燭台もあった。ご丁寧なこった。蝋燭に火を点け、たきつけように細い薪を作り、クシャクシャにした新聞紙の上に丁寧に並べ、太い薪を4本組んだ。薪は多少しけっていたが、火はすぐについた。火の気持ちになれば、火はつく。冷え切ったリビングにかすかにぬるい空気が流れた。
「あんた凄い!」と猫が言った。
「まあね。酒を持ってこよう」

猫は暖炉の前で丸くなった。コタツがあればよかったのにな。中流さんにはコタツはイメージじゃなかったんだろう。リビングにはピアノがあった。ピアノを触るのなんて中学生以来だ。音は調律が狂いまくっていてひどいもんだったけど、俺は「猫踏んじゃった」を弾いた。そして弾いてから猫に申し訳ないような気になった。
「この曲嫌い?」
「別に」猫は眠そうに答えた。
「あ、そう」そんなもんか。
俺は猫の頭を抱くと膝に乗せ、柔らかい毛を撫でながらラムを飲んだ。

どれぐらいそうしていたんだろう。
気が付くと暖炉の火が消えそうになっていて、キンキンに冷えた空気が戻ってきつつあった。
猫は寝ていたようだったけど、パッチリと目を開けた。
「散歩に行こう」目をパチパチさせながら猫が言った。
「どこへ?」
「そのへん」

外には月が出ていて、世界は青白かった。
しかし俺達のカッコは雪の中を散歩するようなカッコじゃなかった。それなのに猫はお構いなしに雪の上を歩いていった。何故かあいつは足があまり沈まないのだ。猫だからか。そうだ、猫だからだ。それに比べて俺はみっともなかった。ズブズブとしか歩けない。おまけに靴もズボンもビショビショになって、冷え切って痛くなってきた。30分ぐらい歩いたんだろうか?まるで昼間のように明るい開けたところに出た。猫は100メートルぐらい先で俺を待っていた。猫はまるで、始めからそこにいる動物のように見えた。

やっとの思いで俺が追いつくと猫は言った。
「あたしここで今死ぬ。あなたも死ぬ?」
息が切れていた。5分ぐらい息がおさまるのを待った。
足の感覚はなくなっていたけど、体は熱かった。
「死なない」と俺は言った。
「どうして?あたし今なら死んでもいい。今より幸せなことなんてない」
「あるさ」
俺は雪を掴むと、それを丸めて猫にぶつけた。
「なにすんだよぉ!」猫はそういって俺に雪を投げ返した。
それから俺達は雪合戦をした。
猫は楽しんでいたかもしれないけど、俺は死にそうだった。
どうやら凍傷になり始めているみたいだ。

空が明るくなってきた。
それから長い長い、ほんとに長い時間が経って太陽が顔を見せた。
雪がキラキラと光って七色に見えた。光は、雪の白を埋め尽くし世界に溢れた。

「...虹だ。見える?」

「......うん、見えるよ」

ポケットの中の10円玉が暖かさを取り戻していた。

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