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20021228: 札束

あるところに札束を数えている女を見ながらマスターベーションすることでしか射精できない男と、札束を数えるのが欲情するほど大好きだったためにその男と出会って恋に落ち、セックスできないのは悲しいけれど、それでもその男のことをとても愛している女がいました。
二人はとても優秀な社会人でした。何故なら二人には大量の札束が必要だったからです。しかし二人はとても貧乏でした。何故なら二人には大量の札束が手元に無ければならなかったからです。

二人が出会った頃、二人の手元には30枚ほどの札しかありませんでした。毎日の生活の中でその札が減っていくのはとても悲しいことでした。男は同じ札が二度数えられることをとても嫌がりましたし、その気持ちは女にも理解できました。実際それで問題がなかったらどんなに楽だったことでしょう。しかし男のペニスは2度目の数えに入ったとたんに萎えてしまったし、女の気持ちも萎えてしまうのです。また、札は全て同じ札でなくてはなりませんでした。5000円札と1 万円札が混じっていてはダメだったのです。普通は1万円札を用いましたが、ちょっと気分を変えたいときなどは5000円札を使うこともありました。

女は札を数えるのがほんとに上手でしたので、30枚の札などはほんの2秒ほどで数え終わってしまいます。ですから10枚をまとめて数えるのは二人の間で禁止になりました。かならず一枚一枚ピチッピチッとやります。それでもほんの10秒ほどもかかりません。男は出来るだけなめらかに素早く数えられていくのが好みでしたが、美しさを重視することで時間を20秒まで延ばすことが出来ました。その手つきといったら神業のようなキレの良さと天使のような優雅さなのですから男が惚れ込んだのも無理はありませんでした。「オマエは俺のヴィーナスだ、いつかオマエがフルスピードで数えても一日中かかるぐらいの札束を用意してやる」というのが男の口癖で、女はそれを言われると一日中自分の前でマスターベーションしている男を想像し胸が熱くなるのでした。

二人はほんとによく働きました。地位も上がり年収もそれなりになりました。今ではフルスピードで数えても30分ほどかかる札束が二人の前にはあります。
「俺達もやっと人並みになったな」と男は言いました。
「そうね」と言って女は笑いました。
「なんかおかしいか?」
「ううん」
「俺、最近思うんだけどオマエ札を数えるのが前ほど好きじゃなくなってきたんじゃないか?」
「そんなことないわよ」
女はそういってから、ああ、嘘をついたな、と自分で思いました。別に男のことを嫌いになったわけでもないし、飽きたわけでもないのに、前ほど気持ちが入らなくなってきたのは事実だったのです。
「オマエを攻めるつもりなんてないんだ。いいんだよ。だけど俺考えたんだ。おれたちには今デカイ冒険が必要だと思うんだ。今度オマエが数えたことがないぐらいの札束をここに積んでやる。ほんとに一日中かかるぐらいの札束だ」
女は急に怖くなりました。
「なにいってんの、そんなの無理よ。一体どうやってそんなお札を用意できるっていうの?」
「いいからまかせておけって、今度の土曜日。この部屋は札で埋まる。そこで俺達はぶっ通しで愛し合うんだ」

それから土曜日までの間、男は一言も口をききませんでした。そして土曜日の朝、男はいつものようにスーツを着て出かけました。出掛けに女に「キスをしてくれ」といいました。女は男の頬にキスをしながらあまりの不安に涙が出そうでした。

男はいつまでたっても帰ってきませんでした。女は何度も男を探しに行こうと思いましたが、今帰ってくるかもしれない、あと5分したら帰ってくるかもしれないなどと思うと、外に出ることもできませんでした。そうこうしている内に夜中の12時も過ぎ日曜日になってしまいました。
二時を回った頃チャイムを鳴らすものがいました。
ドアの覗き穴を覗くとスーツを着た見慣れない男が立っていて「警察です開けてください」といいました。
ドアチェーンをかけたままドアを開けると男は警察手帳を取り出し「警察のものです。実は大変申し上げにくいのですがお宅の旦那さんが造幣局に立てこもっております」といいました。女は「ああ、やっぱり」と思うと同時に安心もしました。刑事は女に説得にあたって欲しいので付いて来て欲しいといいました。

現場に案内されると男は札に囲まれてピストルを構えていました。刑事の話によれば男の要求は自分の妻をここに連れてこいということだけだというのです。
女は全てを理解しました。
「まかせてください」と女はいいました。
「でもとにかく手を出さないで静かにしていてください。絶対危険なことにはなりませんから。約束してください。お願いします」
刑事は女に約束をし周りを取り囲んでいる警官に指示を出しました。現場に静寂が訪れました。
女は男の前に行くと札を数え始めました。女の指と札の擦れる音ががらんとした空間に響きました。男はピストルを構えたまま女を見つめました。女はこれまでにないぐらいのスピードと美しさで札を数えました。警官達は唖然とした表情で二人を見つめました。この二人が一体何をやっているのかまったく理解できなかったからです。

一時間がたちました。我慢できなくなった刑事が女の名前を呼びました。すると女は「黙りなさい!」と強く大きな声でいいました。男はそれまで、いくら女が美しく札を数えても勃起することが出来ないでいました。警官に囲まれて、生まれて始めてピストルを構えて緊張もしていましたし、数え切れないぐらいの札を数えさせることが出来たことに対して少し舞い上がりながらも有頂天になってもいたのです。しかしその女の声が男の心に変化をもたらしました。男は自分と女の結びつきを感じ、二人の間に自分たちの部屋にいるような親密な空気を感じたのです。すると男のペニスが急に充血し始めました。女はひたすら札を数えていましたがそれがすぐにわかりました。見たわけではありません。感じたのです。女は今まで以上のスピードで札を数え始めました。男はピストルを構えたまま絶頂に向かって登りつめていき、それと共に女の札を数えるスピードも上がっていきました、女は男の体を自分の体の中に感じましたし、男は自分が女を愛撫し、同時に抱かれているように感じました。そしてこれまでに感じたことのない強烈なエクスタシーが二人に訪れました。男の目から涙が溢れました。そして女の目からも涙が溢れました。男はゆっくりとピストルを床に置き、女は札を数えるのを止め、二人はそのまま札束の上に倒れ込んだのでした。

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