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20031230: ミルクの膜

なんだろう、なんだろう。俺のクソみたいな野望と、この気持ちよい冬の朝は。なんだろう、なんだろう。羨望と甘えと不躾と依存の上に成立した眼差しとくだらない寂しさは。些細なことなんて蹴飛ばすんだ。そんなことは些細なことだ。些細なところで生きていたくなんかない。

お餅があったらラクチンだ。即席ラーメンや、チーズトーストよりもラクチンだ。醤油をつけて海苔を巻いて行くんだ。さっさと、いくんだ。

観覧車のてっぺんから、見るんだ。俺の橋を。西日にテカった鉄板を。オモチャのような急いだ車の行列を。

ヘコヘコしちまった俺には申し訳ないが、そんな俺も些細な俺だ。俺は別にでかくなりたいわけじゃない。でかくなってヘコヘコしたり、偉そうにするより、いまのままでどこまでも平気でいるほうがずっといい。

自分のことは知らないが、たぶん俺は強い。かなり強い。俺にとって自分の弱さは、馴染みの同居人だ。無視もしないし、ベタベタもしない。大きくなってやがて家を出ていく準備をしているこどもなんだ。そこそこマジメに飯を食わしてやって、勝手に育っていくのを待っているんだ。我慢もしないし、囲わない。それはよく見える。誰からも。恥ずかしくなんか無い。

ポケットボトルをラッパ飲みしながら、汚い海辺を散歩するんだ。ザクザクと。高校一年生のカップルが、ズボンを膨らませた眉毛を剃った色白の男の子と、無理して買った一張羅の白いコートに安物のブーツで腕を組んでいるなんて、そんなぐらいには世界は平和で、オドオドした男の子のガンつけには、恥ずかしげな笑いがあって、橋の向こうに北風と一緒に流れて行くんだ。

冷めて固く不味くなった串餃子に寄ってくる野良猫が必死に食らいついているその物体は、俺の手からはなれたようには見えなくて、そんな程度にはみんなひとりぼっちで、それでいいじゃんか。お前は可愛いよ。

ストーブがあったかい。あったかいおかげで、手がかじかむこともなく、これをのんきに書いている俺は、手がかじかんで、こんなことをやっていられない俺と、大して違わない。貧しさは届きにくい。でもそれは届きにくいだけだし、ほんとのことを言ってしまえば、貧しさなんて存在しない。リッチでもプアーでもないように、しか、生きられないじゃん。死ぬことは貧しさじゃないんだよ。少なくとも。

金が空の高いところを流れていく。スーパーのビニール袋みたいに。たまに電線に引っかかったり、成層圏に追いやられたりしながら。俺は、ここで、自分の弱さだと思っていたものが、弱さなんかじゃなく、ただの健全な他者の細胞だったに過ぎないということを、ことに、つきあうんだ。

超人には憧れるけども、超人なんて嘘だ。俺は自分のそばに浮遊する、ミルクの膜だ。ユラユラと破れたり、掬われたり、生成したり、し続けるんだ。ミルクは俺じゃない。俺というヤツは、ミルクの外で、ミルクによって、ミルクが無くなるまで、そこにいるんだ。

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