July 2012Archive

覚悟が無かったら何も出来ない。この単純な事実が、時によっては受け入れるのが難しかったりする。頭は、「こんな状況で覚悟を決めていいんだろうか?」とか「何も今覚悟を決めて無くても…」という、どうしようも無い疑問を発しまくるからだ。

もっと具体的に言えば、こんなに収入が少ないのに、とか、こんなに毎日被爆し続けているのに、とか、こんなに何も知らないのに、とか、こんなに何も出来たことがないのに、とか、こんなにみんながバカなのに、とか、こんなに何をやっても甲斐がないのに、とか、とにかくそこには、あらゆる理由が付与され得る、とってもぬるい温床だったりしてしまうのだ。

しかしその決断の決め手は自分ではないのだ。自分が生きてきたプロセスの必然でしかないのだ。良いも悪いも無いのだ。そして、その必要とされる覚悟が何のための覚悟かといえば、自分が今出来ることを実現する為の、とってもプライベートで、とっても密やかな、単純な覚悟でしかないのだ。

それを覚悟することは誰にとっても難しいことではない。なのにその覚悟を人は遠ざけてしまう。難しいことではないのに。たぶんその理由は、人がプロセスに関わることを忌み嫌うようになったからなのだろう。プロセスに関わることこそが生きることなのに。

プロセスというのは昆虫の完全変態のようなものだ。そこには奇跡がある。凝縮された時間と変身の秘密に満ちている。それを体験することが、どれほど心を躍らせることかは誰もが知っている。そのリスクを受け入れずに、他にどんなリスクを受け入れる価値があるのだろう。

昔、たぶん20年ぐらい前に、精神の構造を階層化して認識できれば、エゴイズムからの離脱への方法論の確立とか、認識の精度の向上とか、もっと露骨に言ってしまえば、外界に対する愛のレッスンが出来るのではないかと考え、本気でそう信じて、何年もそのことばかりを考えていた。

スーパーエゴだのハイパーエゴだの、メカニズムとしての精神だの、その認識に近づくための方法論としての瞑想だの、深層意識を引き出すための過激な身体技術だのを試してみたりもして、もうまるで一人カルトのように突っ走っていたのだった。

その経験や思い込みが無駄だったとは少しも思っていないし、その経験によって、まるでその時とは正反対に、精度の悪い認識や、未分化な精神構造に対して、寛容であるどころか、自分もずっとその未分化の中に居続けること、その覚悟を決めることが、逆にあの時に求めていた自分の答えに近いんだと思うようになった。

エゴイズムのエゴとはエゴなんかではなく、エゴイズムという定義そのものがエゴイズムなんだから、エゴイストといわれる人は、全然エゴイストなんかじゃないのかもしれない。エゴイスティックな、そのように今の社会で定義される運動というものがある。その運動を生成する欲望の拠り所がどこにあるかだけが問題なのだろう。その運動はどのように欲情されたのか。その欲情が身体的で生物的ある限りにおいては、その運動に対して社会は寛容であるべきだと思う。

しかし、生物的でない欲情がどこにあるのか。生物的でない欲情は呪いと呼ばれている。たぶん。ほとんど全ての人間は呪いを抱えている。例えば今起きている戦争は、抱え続けている呪いをその理由としている。もっと小さい呪いは、あるいはより深刻に親子の間で生成され続けている。そして呪いは代々引き継がれる。呪いから逃れるのはとても困難だ。誰もが一生をかけて呪いに挑んで死んでいくのだ。そしてほとんど誰もが、その試みに失敗するのだ。呪いを解くには人生は短いのかもしれない。でもそれが長いか短いかはどうでもいい事だ。それを長いというのも短いというのも他人だけだからだ。自分には長いも短いもない。自我の未熟さにもかかわらず、身体は成熟している。その成熟した身体が長いも短いも無いよ、ということを教えてくれる。だから安心して呪いを解くという物語に専念すればいいのだ。

この物語の中では、精神の階層も、認識の精度も、ただのツールになるだろう。そしてツールというものは、そのように機能している時にだけ美しさを発揮する。

古い機械を触っていると、いたるところが「こうでないといけない」という思いに満ちていることに圧倒される。その思いは未来に向かっている。それとは逆にメンテナンスや耐久性を無視した現代の機械を触っていると「これでもいいんじゃない?」という思いに満ちていることにウンザリしてくる。その思いは過去に向かっている。

基準がまったく違うのだ。古い機械の基準は、製作者本人と、その本人が思い描く未来におかれている。現代の機械の基準は、誰だかわからない消費者という名の他人と、既に達成済みの積み上げられてきた技術体系に置かれている。

あらゆる製作物は、それが機械であれ、住居であれ、衣服であれ、創作物であれ、本質的に未来に向かっていないと、何にも面白くないし、面白くないだけでなく、それを使う人間をもダメにしてしまう。過去を向いて作られたものは、社会的に学習済みとされた経験をもたらすことに特化しているからだ。その効率だけを訴求するためにコストダウンと大量生産の暴力が適用される。もちろんそのような製作物からであっても、学習済みではない経験が導き出されることは可能なわけだけど、それは使う側の問題であって使われる側の問題ではない。使われる側にそのような配慮なり、態度が欠如しているということが問題なのだ。

古い機械にはRPGじゃないけど、愛と冒険の物語がある。もちろん古くなくたって、おそらくは実用から最も程遠いような最先端の技術にも愛と冒険の物語がある可能性は高い。その間の、もっとも膨大な空間にはつまらない砂漠が広がっている。そしてほとんどの人々はその砂漠で生きている。この構図はとてもつまらないし、そこで生きる人にとって不幸なことだ。

前回の続きです。
120707-01.jpg120707-02.jpg塗装に入る前に磨きだしになる部分を磨いておきます。
120707-03.jpg120707-04.jpg磨きだし部分をマスキングします。使っているのは3Mのマスキングテープ。エッジでの塗りわけが多いのでカッターだと切りづらく、文字以外のほとんどを先の尖ったハサミで処理しました。
120707-05.jpg120707-06.jpg120707-07.jpg塗料はどうしようかと考えていたら、GullCraftが「焼付け塗装用の黒があるよ」と言ってくれたので、お願いすることにしました。ありがとうー。
もちろん何色でも好きなように出来るわけですが、機械は黒が好きなんです。金属がとても良く引き立つ。120707-08.jpg120707-09.jpgマスキングテープを剥がします。おおー、美しいー
120707-10.jpg120707-11.jpg120707-12.jpg仮組みして見ます。ピカピカですよ。惚れ惚れ。かっちょえー
この後に主軸回りのすり合わせも行って、完全に組み上げましたが、まだ終わりません。後やらなければいけないことは

  1. 欠けたプーリーと折れたハンドルの補修。これは溶接かロウ付けで行います。上手く行くかなー。
  2. 動力の調達。まず人力でいくか電気でいくかで悩んでます。工業用ミシンの足を調達してくればフライホイールがデカイのでそこそこいけそうな気もするんですよね。ただし嵩張る。あと旋盤のプーリーは左側なんですが、ミシンは右側なんです。これはどうにかなるだろうけど。足踏みのいいところは電気代が掛からないこと以外にも変速が自在なところじゃないだろうか。しかしフライホイールの慣性力によるところが大きいのですぐに止まることはできないですね。電気の場合だと200Wぐらいのモーターが丁度いいのかな。大きければ大きいほど重切削が可能になるわけですが、あんまり電気を食うのはいやです。
  3. チャックの調達。現状は2.3mmのコレットチャックが1本ついているだけなので、これじゃ使えません。どこかから三つ爪のスクロールチャックを見つけてこなければ。取り付けはM19のピッチ1なのでマウントも作らなければなりません。しかしこの旋盤は変なネジが多いです。一応メートル規格で作られているんですけど、荒いネジや細かいネジ、11mmとか9mmのネジなど、普通じゃあまりお目にかからないネジがそこいらじゅうに使われています。ということをGullに言ったら、ドイツの製品はみんなそうらしい。そうなのかー知らなかったよ。
  4. 刃物台の改造。これについている四面刃物台はオリジナルじゃなく前の所有者が作ったもののようです。まあそれはいいんですけど、現状だとバイトが6mmまでしか使えません。今メインで使っているバイトが9.5mmなので出来ればこれを使えるようにしたい。ただし寸法がかなり微妙です。たぶん一番いいのはクイックチェンジ刃物台とか言うやつを付けることでしょうね。しかしいいお値段です。自作している人も沢山いますから、いずれどうにかしよう。とりあえずは少しフライスで削って8mmぐらいまでは使えるようにしておきます。
  5. 芯押し台のテーパーの改造。この芯押し台、センターなどを差し込む穴がストレートホールです。元からそういう設計なんですが、一体これでどうやって使っていたんだろうか。普通はモールステーパーという、ごく緩いテーパーになっていて、そのテーパーの摩擦で固定するんですけどね。これだと今揃えているドリルチャックだの回転センターだのが生かせないのでテーパー穴に削りなおそうかと思っています。

というわけで、まだ使えるようにはなりません。時間は空くだろうけどたぶん次回に続きます。
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【関連リンク】
旋盤日記:Lorch LL Latheレストア-その1
旋盤に夢中:サカイマシンツールML-210

リアリティが個人的なものだということにずっと納得していなかった。バカみたいだけど、本当のことだ。今でもそれを納得できているかというと怪しいぐらいなのだ。ほんとに俺はバカなんじゃないかと思う。いや、ほんとにバカなんだろうけど。

だって、こんなに嬉しいのに、こんなにワクワクするのに、こんなに衝撃的なのに、こんなに美しいのに、こんなに真摯なのに、なぜそれが人に伝わらないわけがあろうかと、ずっと思ってきたのだ。これほどのものが他人に伝わらないなんて、それは他人が悪いんであって、そいつがどうかしているだけなんだと思っていたのだった。ああ、本当に俺はバカだった。

でも実際は他人はバカじゃないらしい。バカなのは俺だけだ。どんなに美しいものであれ、どんなにワクワクするものであれ、それはあくまでも俺の個人的な経験であって、なんの普遍性も持っていないのだ。だが、ここで折れたままで居る訳には行かないのも事実だ。それはどういうことかと言えば、俺のこのリアリティは、どんなに少なく見積もっても、俺にとってはリアルであるという事実が残るからだ。そしてそれは、俺にとってはリアルであるという事の以下でも以上でもないということだ。

ある時には共感が得られるだろう。ある時には無視されるだろう。しかしどんな反応があろうとも、それは良くて勘違い、悪くすれば戦いのネタにされるのがせいぜいだ。だから俺のワクワクは俺だけのものだ、そうしておくのだ。そして1人で作るか叫ぶのだ。自分のためでさえなく。このワクワクの為に。

120701-01.jpg
ちょっと前にTwitterでヤバい旋盤を手に入れたと書いたブツが届きました。写真はオモチャを開封して狂喜しているサクバの図。
120701-02.jpg120701-10.jpgこれをジャンクと呼ばずしてどうするのかというぐらいのボロっぷりです。草むらがとてもお似合い。これはこれで眺める分には悪くないですね。しかしもちろん使うつもりで手に入れたのです。全長は700mmぐらい、ベッドの長さは500mm、芯高は65mmです。前の日記の旋盤よりはもう少し大きな工作物が加工できますが、かなり小さい部類の旋盤です。この旋盤はドイツのLorchという時計旋盤で有名なメーカーの製品で、1930-1950年代初頭ぐらいまで生産されていたものらしい。しかも前回の日記でこんなかっこいい旋盤があるのかとリンクを貼った中に紹介されているものとほぼ同じものです(細部はいろいろ違うので正確な型はわからないのですがLLシリーズであることは間違いない模様)。まあ要するに新しくても60年前、へたしたら80年ぐらい前の製造ということになります。旋盤には真鍮のプレートが付いていて「番号ML500-5」と書いてあり、ということは同じ機械が5台以上使われていたわけで、おそらくはどこかの時計工場とか学校とかの備品だったのでしょう。日本のオークションにこんなものが出てくるとは夢にも思っていなかったので、これが出品されてからはこの旋盤のことで頭がいっぱいになってしまいました。しかし精密機械を精密機械として使うには肝心な部分がダメになっていると大変な手間が掛かります。ベッドの水平が狂っていたらフライスで面出しをしないとならないし、主軸が固着していたら、最悪は主軸を削りださないといけないかもしれない、とそれぐらいの覚悟はしていたわけですが、現物はというと回転部分の固着は無くパッと見の精度も問題ないようでした。これなら何とかなりそうです。120701-03.jpg120701-04.jpg1日目:まずはワイヤーブラシで目につく錆と汚れを全部落とします。この手の機械だと精度に影響するところは削ることで精度が狂ってしまうので、そういう部分は真鍮ブラシだけでせっせと錆を落とします。精度に影響しない部分はステンレスブラシをメインで。結構あっさりと動きそうな雰囲気になりました。120701-05.jpg2日目:完全にばらします。外側がいくら綺麗にできても可動部分には古い油が固着して動きを渋くしていたりするものです。これもバラしてみると、本来動くはずのところが動かなかったりネジが回らなかったりという部分がそこいらじゅうにありました。120701-06.jpg120701-07.jpg3日目:一度ばらしてから、一日掛かってそこそこに磨きをかけ組み上げたクロススライド。曲がっていたハンドルもバーナーで炙って修正し、実にスムーズに気持ち良く動くようになりました。サカイの旋盤と比べてもはるかにいい感じです。ホビー用と本物は違うものなんだと感心してしまいました。こうなってくるともうジャンク品じゃありませんw眺めてる顔はにやけまくりです。120701-08.jpg120701-09.jpg4日目:塗装を剥がします。剥離剤を使えば楽なのですが、手元に無かったのと、モノが小さいので何とかなるだろうとスクレーパーで実行。かなり疲れました。まだ手がむくんでますが、おかげでどうにかなりました。付いていた真鍮プレートは悩んだ挙句に外しました。大事に保管することにします。さて、次は塗装ですね。
次回に続く…
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【関連リンク】
旋盤日記:Lorch LL Latheレストア-その2
旋盤に夢中:サカイマシンツールML-210

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