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080709.jpgその日に考えていたことはヒグラシの鳴き声であったはずだった。もしそれが正しければ次の日に考えていたことは海辺の油の表層の揺らめきであったはずだ。そしてそれも正しいならば、今日考えていたことは祝祭的な死んだ箱のことであっただろう。

しかしもし、その日に考えていたことがオケラの鳴き声であったなら、次の日に考えていたことは流体としての草原であったはずで、その草原は俺を、滑らかにたなびく草を支える振動する地面に導き、地中をとても遅く、しかし確実に泳いでいく俺は、今日の曇り空にのぞいた晴れ間に、たまたま通りかかったアゲハと出会っていたのだ。

今ここに訪れた、こいつはなんだ。
こいつは、どんな巡り会わせでここに来たのか。そんなことは知ったこっちゃない。こいつの皮膚の滑らかさと、それがこいつには属さない物質によって構成されていようとも、その滑らかさが、ヒグラシの鳴き声のように、まず表層として立ち現れるのだ。そしてヒグラシの鳴き声はヒグラシの総体ではない。俺の言葉が俺の総体ではないように。滑らかに見えるこいつの総体など俺に分かるものか。例えばその皮膚がびっしりと細毛に覆われているがゆえに、その滑らかさが実現されているとして、俺はそれを知らなくてもちっともかまわない。

こいつが俺の中に入ってくる。滑らかさを利用して。
こいつはたぶんドブなのだ。ドブそのものなのだ。なぜなら、俺がコイツをドブと名づけたからだ。ドブは礼儀正しく俺の喉を広げ、礼儀正しく俺の皮膚を開く。俺は自分の体の中に外を発見する。子供がオンモで遊ぶように、ドブは俺の体の中を通過していく。


もしも今日考えていたことがドブが通過する感触であったなら、明日考えたことはスピーカーの埃を巻き込んだ振動である。そして埃と共に振動するダニと共に眠りが訪れ、明後日の俺がケツの割れ目に雫を貯める。やがてその雫は森を潤すのだ。

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